過去の移動軌跡から人々が次にどこへ向かうかを予測する移動先予測は,都市計画や交通の最適化,災害時の避難誘導など,幅広い応用が期待される基礎的な研究課題です.近年では,スマートフォンなどから得られる大規模な位置情報と,Transformerに代表される機械学習モデルの発展により,高精度な予測が可能になってきました.
一方で,軌跡の履歴だけを手がかりにすると,通勤・通学のように繰り返される日常的な移動は捉えやすいものの,普段とは異なる移動を予測することは容易ではありません.目的地周辺の施設(POI: Point of Interest)情報を利用すれば,候補となる地域の特徴を踏まえて移動先を予測できると考えられます.例えば,目的地の候補としてオフィス街と商業地が挙げられた場合,時間帯や直前の行動とそれぞれの地域の特徴を組み合わせることで,どちらへ向かう可能性が高いかを推定できます.
しかし,予測時点では目的地そのものが未知であるため,どの地域のPOI情報を参照すべきかをあらかじめ決めることはできません.そこで本研究では,移動先となり得る500mメッシュを目的地候補として設定し,各候補メッシュのPOI情報と軌跡履歴を組み合わせることで,それぞれが移動先となる可能性を評価する手法を提案します.これにより,目的地が未知の段階でも候補地域の特徴を考慮し,移動先予測の精度を高めることを目指します.
スマートフォンの位置情報を匿名化した大規模な移動軌跡データであるHuMob Challenge 2024データセットを用いて,提案手法の予測精度を評価しました.評価には,予測軌跡と実際の軌跡の近さを,地理的な距離を考慮して測る指標GeoBLEUを用いました.GeoBLEUは,値が高いほど予測精度が高いことを表します.実験の結果,提案手法はGeoBLEU 0.324を達成し,同コンペティションにおける1位手法の0.319を上回りました.さらに,予測された目的地候補と実際の移動先との位置関係に着目した分析から,実際の移動先に近い候補が得られている場合には,候補周辺のPOI情報を利用することで予測誤差が効果的に修正されることを定量的に確認しました.
Publications
目的地候補周辺のPOIを用いた移動先予測の高精度化
情報処理学会研究報告 第90回UBI研究発表会, 奈良県奈良市, 5 2026.
